レポート51 / 2018.05.07
本棚プロファイリング シーズン1

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「本棚を見るとその人の内面が分かる」
そんな言葉があります。…しかし実際のところ、本当にそんなことができるんでしょうか?本シリーズでは、研究員がとあるご家庭にお邪魔して、本棚を拝見。ひと通りプロファイリングしたあと、持ち主にヒアリングして、分析内容がどれだけ合っているか検証してみることにしました。

持ち主(Sさん)の基本データ

【年齢】 34歳
【性別】 女性
【出身地】 東京都
【家族構成】 夫(37歳)、娘(2歳)
【職業】 夫婦ともにデザイナー
【居住地】 東京都台東区在住
【居住形態】 マンション

本棚はリビングに置かれていました。リサ・ラーソンの置物やイラストがたくさん飾られた、おしゃれでポップな本棚ですね。さて、この本棚から、どんなことが読み解けるでしょうか?

検証1 レイアウト

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ジャンルをきっちりと分けており、本の大きさを揃えるあたり、さすがデザイナーといったところ。しかし、細部をよく見てみるとまた違った一面が見えてきます。漫画が上下逆に入っている、入りきらなかった本が横になっている、本棚の前に本が積みあがっている、本棚の後ろから何かが垂れ下がっている…。どうやら、すべてがきっちりしていないと気がすまないタイプというわけではない様子。やわらかく親しみやすいデザインを好むことからも、大らかな性格だといえるでしょう。

『かいじゅうたちのいるところ』モーリス・センダック(冨山房)など、かわいい本は面出し。その他、鉢植えなどさまざまなモノが置かれており、本を取り出すには不便です。これには見栄えを良くするだけではなく、お子さんが勝手にさわらないように、絵本やおもちゃで気をそらす意図があるのでは?そう考えると、再下段の棚がぎっしりとすき間なく埋まっているのも納得がいきます。こうすれば2歳の子どもの力では、カンタンに抜き取ることはできませんから。
また、Sさんは小柄な方ですが、本棚には上段や天板にまでグッズがしきつめられています。旦那さんの協力的なしにここまでの完成度はあり得ません。本棚は共用で、相当趣味や性格の近い夫婦といえるでしょう。

〈プロファイリング1〉

夫婦の性格はかなり近いようだ。本棚は共用?

検証2 書籍

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単行本、文芸書はかなり少なめ。小説にはあまり関心のないタイプです。並んでいる文芸書のほとんどが村上春樹作品ですが、世界に誇る作家とはいえ、なぜここまで偏った買い方をしているのか?
しばらく本棚全体を見渡してみると、ヒントらしきものが見つかりました。安西水丸、和田誠といった、イラストレーターの作品です。このおふたりは、村上春樹作品のイラストを手がけていることでも有名。Sさんはおそらく、イラスト目当てで購入しはじめたのではないでしょうか。文芸書のなかに、同じくイラストを手がけるリリー・フランキーさんの作品『東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~』(扶桑社)があることや、村上春樹作品でも文字だけの表紙の文庫版が見当たらなかったことなどが、「イラスト買い」説を裏づけています。

〈プロファイリング2〉

イラストがきっかけで村上春樹を好きになったのでは?

検証3 雑誌

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本棚の大半を占める雑誌。バックナンバーは数年前で止まっているものが多く、結婚・育児を経て購入頻度は落ちているようです。一方、鉢植えのそばに積まれた雑誌の一番上には、ざっくばらんに置かれた育児雑誌『tocotoco』(第一プログレス)が。よく読む雑誌はこの辺りの数冊でしょう。雑誌の種類は映画・音楽を中心に、カルチャー系が多め。中でもSさんの人生を知る上で重要だと思われるのが、以下の2タイトルです。

『ROCKIN'ON JAPAN』(ロッキング・オン)
ここには分かりやすい法則性がありました。一番古い253号(2003年11月)をはじめ、2006年~2009年までのMr.Childrenの特集号が揃っていたんです。2006年といえば、Sさんは22歳。就職して、一人暮らしをはじめるころですね。2003年の号のみ突出して古いのは、学生時代にお気に入りだった号をわざわざもってきたのでしょう。他の雑誌『SWITCH』(スイッチパブリッシング)や『MUSICA』(FACT)にもほとんどミスチルが掲載されているため、大ファンなのは間違いありません。
さらには2012年のツアーパンフらしきのも発見しました。Sさんは東京出身ですから、2012年5月23、25、26日の東京ドームライブに参加した線が濃厚です。

『Koiunreki』(イースト・プレス)
本棚のなかでも、ひときわ毛色の違う恋愛雑誌です。3冊あって、すべて2011年に発行されたものでした。一番古いものは3月号で、特集は「GWまでの3カ月限定 恋愛占い」。2011年3月といえば東日本大震災が起こったタイミングですから、心細さから恋人の存在を求めたのか…。と思いきや、この号は2月8日~3月8日に販売された号なので違いますね。Sさんは当時27歳。友人の結婚式が増えて、焦りを感じたというところでしょうか。
さらに3ヵ月後の6月号は「石井ゆかりの星の相性占い」、10月号の特集は「生き方と運命とラブ運勢のほか、恋愛、結婚の条件、仕事、お金のことがぜんぶわかる、自分探しができる号」でした。3月はある男性と気になる同士になり、6月にはつき合い始め、10月に早くも将来を意識した、と考えるのはさすがに単純すぎるかもしれませんが、2011年に関係を深めた可能性は高そうです。
同じく棚にあったunico(家具通販サイト)カタログは2012年度版。堂々と棚に置いてあることから、当時の彼氏が現在の旦那さんで、この年に同棲を計画したとみて間違いないでしょう。

〈プロファイリング3〉

・2012年5月、ミスチルの東京ドームライブに参加?
・旦那さんと同棲を開始したのも同じく2012年と推測。

検証4 その他

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小物、イラスト、本の題材には動物が多く登場しています。かなりの動物好き。いまはマンションに住んでいるので飼えないけど、将来は犬か猫を飼いたい。そんな気持ちが表れているように思いました。
意外なのは、子ども用の本が少なかったこと。これだけ好奇心の強いお二人が教育に無関心とは思えませんから、おそらく寝室に置いてあるのでしょう。

〈プロファイリング4〉

動物好きで、将来は犬か猫を飼う予定ではないか?

以上でプロファイリングは完了。結果は以下のようになりました。
真相はどうなのか、ご本人に聞いてみることにしましょう。

〈プロファイリングまとめ〉

・夫婦の性格はかなり近いようだ。本棚は共用?
・イラストがきっかけで村上春樹を好きになったのでは?
・2012年5月、ミスチルの東京ドームライブに参加?
・旦那さんと同棲を開始したのも同じく2012年と推測。
・動物好きで、将来は犬か猫を飼う予定ではないか?

答え合わせ

研究員
かなりオシャレな本棚ですね。やはりいろいろ回って、購入されたんでしょうか?
Sさん
無印良品で買いました。大きな本棚はなかなか値段が張るので買おうかどうか迷っていたのですが、この展示品価格で70%OFFになっていたので、その場で即決しました。大げさですが、奇跡的な出会いでしたね。
研究員
小物や絵など、全面を活かしていて、本当にステキです。
Sさん
ありがとうございます。職業柄、ものの配置にはこだわってしまいますね。せっかくだから月間でレイアウト変えていこう!と1月はリサ・ラーソン特集にしてみたものの、変えられないまま何ヶ月も経ってしまいました…。
研究員
これだけ大きな本棚の模様替えをするとなると、旦那さんの協力が要りますよね。ご夫婦の性格はかなり近く、本棚は共用と見たんですが。
Sさん
そうですね。お互いデザイナーですし、好みも似ているので一緒に使っています。
研究員
やはり。絵本を面出しにしたり、雑誌をすき間なく並べているのはお子さんがさわらないように?
Sさん
ぎゅうぎゅうなのはご指摘の通りですが、面出ししているのは単に本を隠したいだけですね。普通の本が並んでいるだけだと、あまりかっこよくはないので。
研究員
見た目を重視した結果でしたか…盲点でした。では気を取り直して、次の検証へ。村上作品をはじめ、文芸書に興味をもつきっかけはイラストではないですか?
Sさん
確かにイラストがかわいいとつい買いたくなりますが、それだけではないんです。たとえば、リサ・ラーソンのパンダの小物があるじゃないですか。実はあれ、新潮社の本を100冊買うともらえる限定品なんです。そのためだけに古本屋を回って何十冊も買いました。すべて夫の部屋に保管しています。
研究員
お子さんの読む本は寝室のほうに?
Sさん
いえ、リビングにありますよ。ちょっと分かりにくいですが、こちらの収納です。毎月誕生日の日にちに、1冊新しく絵本を買い足すようにしています。

イメージ子ども用の本棚には、王道かつセンスの良いタイトルがならぶ。

研究員
なるほど…。文芸書は読まないのではなく、見た目的に表に出していないだけなんですね。それでは、プライベートのほうも伺っていきましょう。ズバリ、現在の旦那さんと同棲を開始したのは2012年ですね?
Sさん
なんですかいきなり(笑)。
研究員
恋愛雑誌と家具のカタログを見つけたものですから。
Sさん
ああ、あの恋愛雑誌は私がデザインしたんですよ。まぎらわしくてスミマセン(笑)。ただ同棲の時期自体は間違っていなくて、確かに2012年ごろだったと思います。
研究員
やはりそうですか(ラッキー)。お二人で「2012年5月、ミスチルの東京ドームライブに参加」したわけですね。
Sさん
うーん。それも惜しいですね。確かに2012年のツアーには参加しましたが、ミスチルのチケットはそう望み通りにいきません。なんとか札幌ドームが取れたので、出張して参加しました。ちなみに夫とミスチルのライブに一緒に行ったことはないです。
研究員
さ、札幌まで…。さすがにそこまでの熱い情熱は、本棚だけでは分かりませんでした。では気を取り直して、最後の質問です。かなりの動物好きとお見受けしました。今はマンションにお住まいなので飼えないものの、将来は犬か猫を飼いたいと思っていますね?
Sさん
いえ、うちペット可なんで。特に予定はないです。
研究員
ガーン。

〈結果〉

・夫婦の性格はかなり近いようだ。本棚は共用?→○
・イラストがきっかけで村上春樹を好きになったのでは?→△
・2012年5月、ミスチルの東京ドームライブに参加?→△※同ツアーのライブに参加したが、場所は札幌ドーム・旦那さんと同棲を開始したのも同じく2012年と推測。→◯
・動物好きで、将来は犬か猫を飼う予定ではないか?→×

どうです?はじめてにしては、なかなかの予想だったんじゃないでしょうか。もっとも意外だったのは「見た目がつまらないので本を隠す」いう発想。デザイナーらしさが出ていますね。やはり社会人にとって、本棚の選書や配置には職業が大きく影響するようです。今後、経営者、研究者、スポーツ選手…などなど、違うご職業の方の本棚にも挑戦して、プロファイリングの精度を高めていきたいと思います。