レポート10 / 2016.07.15
潜入「ブックカーニバルinカマクラ2016」
ブックカーニバルinカマクラってご存じですか?2012年に始まった、本好きによる本好きのためのお祭りなんです。古本市、読み聞かせ会、スタンプラリーなどの企画が盛りだくさん。そんな楽しいイベントですが、担当の僕には研究所から2つのミッションが課せられました。
1.スタンプラリーをコンプリートして特製エコバッグをゲットすること
2.お小遣い3,000円でめぼしい古本を購入してくること
ブックカーニバルは18時まで。……ということで、時間がない!
鎌倉駅到着。
寝坊してしまったせいで、鎌倉駅に着いたのは13時。小町通りは人で溢れかえっていますが、ブックカーニバルの文字は見当たりません。こんなときこそ冷静にマップを確認しましょう。由比ヶ浜通りを海に向かって行くルートで本屋を物色します。
- 13:30 ヒグラシ文庫(残り4時間30分、残金2,800円)
- 手始めに、駅から一番近そうな『ヒグラシ文庫』を狙いますが、なかなか店が見つかりません。それもそのはず、なんと本屋ではなく飲み屋さんでした。簡単に見つかるわけない...。ライブなどのイベントなんかもやっているようです。ここで最初の1冊、ゲットしました。『火星の笛吹き』レイ・ブラッドペリ著、200円。1杯やって行きたいところですが、そんな余裕はありません。昼間からできあがりつつあるお客さんを尻目に、次のお店へ急ぎます。
「店はせまい、でも遠くへつながっている」がコンセプトのヒグラシ文庫。カゴの使い方が斬新。
- 13:50 遊古洞(残り4時間10分、残金2,000円)
- 東口から西口へ線路を渡るとすぐに見えてくるお店。店頭にはアクセサリーや陶器が雑然と積まれていて、こちらも本がメインのお店には見えません。看板の横には猫のイラストとともに「死にたくなったら古本屋においで。生きてなよあんた」の言葉。「古本屋にしたかったのに、人からあれも置いてって頼まれるうちに増えちゃってね。でも今はみんな本を読まないから、そっちのが売れるのよ」と店員さん。僕は本を買います。『カトマンズでLSDを一服』植草甚一著、800円。今回の予算ではなかなかの値段ですが、つい欲しくなり購入(本の魔力恐るべし……)。
- 14:20 ウサギノフクシュウ(残り3時間40分、残金1,500円)
- 遊古洞から数十メートル。まだオープンして2年ほどのきれいなお店「ウサギノフクシュウ」。夏葉社、港の人といった出版社を支援しているようで、選書は人文・芸術系多し。ここでは名前にちなんで動物ものを買いました。『ジャッキーのじてんしゃりょこう』あいはらひろゆき著、500円。日本生まれの有名な絵本シリーズです。
- 駅前だけでお金はすでに半分になってしまいました。ここから先には3つの特設会場を含めて計8ヵ所にスタンプ台があり、うち5つ集めたら公式キャラクター「ピエ郎」の特製エコバッグがもらえるルールです。しかし、僕はすべてのスタンプを集めるのがミッション。由比ヶ浜通りへ急ぎます。
人情派の遊古洞(写真左)/ウサギノフクシュウという店名は美術作家・永井宏さんの詩集『Revenge of Rabbit』から(写真右)
最初のスタンプをゲット。
- 14:50 第1会場 由比ヶ浜公会堂(残り3時間10分)
- 既に3分の1ほど時間を消費しているので、このあたりから時間との戦いです。かなり距離がありましたが、第1会場の由比ヶ浜公会堂にようやく到着。スタンプ台紙と1つ目のスタンプを手に入れました。1階では小カーニバルと称して本の読み聞かせ会、2階では大カーニバル「古本市」をやっていました。目立つ場所にあるので、一番盛り上がっている会場ですね。小カーニバルは子どもが多く入場制限があり、ぜひ本を買おうと意気込んで行った大カーニバルは、賑わいすぎて足の踏み場もなく……。勇気ある撤退を決めました。
- 15:30 第3会場 鎌倉市中央図書館(残り2時間30分、残金変わらず1,500円)
- 寄り道になるため、効率を考えるとスルーしたい場所にありますが、今回の目的はコンプリート。なにより研究員として、図書館を無視するわけにはいきません。さんざん道に迷いながらも、2つ目のスタンプをゲット。当たり前ですが、図書館なのでかなり静かなカーニバル。無料で本を持ち帰れる「くるくるリサイクル」というコーナーがあったので、『オバマ大統領は黒人か』というタイムリーな1冊をチョイス(2016年5月来日されました)。残金は変わらず、1,500円です。さあ、ここからは個人店をめぐって一気にスタンプを集めます。
第1会場由比ヶ浜公会堂(写真上段左)/第3会場鎌倉市中央図書館で無料の本をゲット(写真上段右)/ワークショップに参加したHOUSE YUIGAHAMA(写真下段左)/song book café(写真下段右)
- 16:00 HOUSE YUIGAHAMA(残り2時間)
- 「家×発見」がコンセプトで、カフェ、ギャラリー、シェアオフィスといろいろな一面をもったお店。蔵書はやっぱり建築系の物が多いですね。こちらではブックカバー作りのワークショップにも参加したので、機会があればご紹介できればと思います。……サクサク行かないといけないのにまた楽しんでしまいました。もちろん、帰り際に3つ目のスタンプをゲット。
- 16:30 song book café(残り1時間30分、残金1,030円)
- 絵本と「うた」のブックカフェ。国語の教科書でもおなじみの絵本作家・中川ひろたかさんが10年前にオープンしたお店です。音楽の要素がある分、店内の雰囲気はかなりポップ!店頭では人形劇まで見られます。スタンプはレジ横にあって、ついつい油断してCDを買ってしまいました。『めめめめはなはなへそへそうた』、470円。本ではないですが作家さんが歌っているので、戦利品としてなんとか経費扱いにしてもらいたいところです。
エコバッグをゲット。
- 16:50 第2会場 古民家スタジオ・イシワタリ(残り1時間10分)
- 残り時間もわずかになってきたところで、第2会場へ。“古民家スタジオ”と名のつくとおり、別の時代に紛れこんだような和のテイスト。ここで5つ目のスタンプをゲット。ということで、ついに!やりました。公式キャラクター“ピエ郎”のエコバッグです。すでに無くなっている色やデザインも多かったので、ギリギリセーフだったかもしれません。残るミッションは、予算を使い切ること、スタンプのコンプリートです。
- 17:00 第2会場内 古書田川庄助(残り1時間、残金30円)
- この会場にも古本市があります。あるお店の前に座り、一冊の変わった本を手に取りました。自転車がたくさんが描いてあり、文庫サイズの箱付き。「それ、もともと非売品なんですよ」とお兄さんが声をかけてくれました。表紙に描いてある自転車のひとつに、「アグネスチャンの」というキャプション。な、なんてグッとくるんだ。『自転車の本』を900円で購入。値段もぴったりで、まさに運命の一冊でしたね。あとスタンプを3つ集めたら終了です。
古民家スタジオ・イシワタリ
ミッションコンプリート。
- 17:30 港の人(残り30分)
- 地元の有名な出版社が、路面でシンプルに本を広げていました。この出版社から出ている『かまくらパン』という本は、町中どこに行っても見かけました。目指すところは、「生きていることを見つめ、その根っこを掘りさげてゆくような出版活動」だそうです。ここでスタンプをゲットして、残り2つ。
- 17:40 コケーシカ(残り20分)
- 名前の通り、こけしとマトリョーシカのお店です。こけしもじっくり見てみると、髪型、表情、服の有無などバリエーション豊富で飽きません。一見本は関係なさそうですが、「こけし時代」という雑誌をつくっているようです。所狭しと並ぶこけしに触れないよう慎重に、7つめのスタンプをもらいます。
- 17:50 syoca(残り10分)
- 長谷寺のすぐ近くにあるので、長谷駅から来られる方は一番最初に入るお店ですね。今回見て回ったお店の中では一番スタンダードな絵本専門店。二階に上る階段はすさまじく急。大人だと辛いですが、なんだか子どもにしか入れないような秘密基地感が漂っています。いよいよ最後のスタンプを押して....
港の人(写真左)/コケーシカ(写真右)
- 18:00 終了
- なんとかミッションコンプリート!終盤は駆け足でしたが、1本の通りにこれだけコンセプトのしっかりした店が並ぶのはすごいことですよね。SNSではカーニバルに来た人が買った本を報告したり、終わりを惜しんだりしている様子が多く見られました。「古本市はそのひとの内心をのぞくようなもの」とよく言いますが、確かに自分が持っている本と出会ったりすると一気に親近感が湧きます。紙の本は簡単に消したり付け足したりできないからこそ、思い入れが生まれるのでしょう。
- そのまま海へ行き、日が暮れるまで本を読み、江ノ電に乗って帰る。本を探すだけでなく、鎌倉という街も味わえる大満足のイベントでした。
今回の収穫
8ヶ所コンプリートしたスタンプラリー台紙(写真左)/スクリーン印刷の特製エコバッグ(写真右)
写真上段左『火星の笛吹き』レイ・ブラッドペリ 著
著者は映画『白鯨』の脚本を書いたアメリカのSF作家。索引には「死体回収ロケット」「お菓子の頭蓋骨」など気になる言葉が並ぶ。
写真上段中『カトマンズでLSDを一服』植草甚一 著
おなじみ欧米文学、ジャズ、映画の評論家。ベストドレッサーとしても知られる。「焚き火を見ていると、その火の中に、ぼくがいる。ぼくは火なんだな、いや火の向うに存在しているようだ」と、冒頭からいきなりクライマックス。
1970年代の無茶苦茶なヒッピー文化が満載。
写真上段右『ジャッキーのじてんしゃりょこう』あいはらひろゆき 著
シンプルで言葉が少なく、色の使い方が素晴らしい。本作に登場するイケメングマは必見。
写真下段左『オバマ大統領は黒人か』高山正之 著
週刊新潮連載の超辛口名物コラム「変見自在」の傑作選、第4弾。
写真下段中『めめめめはなはなへそへそうた』長野ヒデ子/中川ひろたか 作
『せとうちたいこさん デパートいきタイ』で日本絵本賞を受賞した作家が、中川ひろたか氏のプロデュースでCDデビュー。
写真下段右:『自転車の本』非売品
1976年ブリヂストンからお客に配られた非売品。自転車の詩、偉人の名言、さらに萩本欽一・桂三枝・森本レオの「自転車と私」という寄稿が続く。アグネスチャンを主人公にした絵本付の豪華版。