レポート13 / 2016.08.31
潜入「BOOK MARKET 2016」
「本当におもしろい本」だけを集めた本好きのためのイベント「BOOK MARKET 2016」。これまで冬に蔵前で開催されていましたが、8回目となる今年から会場が夏の神楽坂になり、出展社も32社と大幅にUP。これは調査する必要があります。さてさて、本当におもしろいと思える本と出会えるのでしょうか。3冊買うと、オリジナルエコバッグもゲットできます。
神楽坂に到着。
会場の日本出版クラブに開場時間ピッタリの11時に到着。オープンと同時に到着なんて張り切り過ぎたかと思いきや、すでに人で賑わっています。本好きの人たちの思いで、会場がなんとなく温まって盛り上がっている感じです。今回は、事前に「ニジノ絵本屋キャラバン特別LIVE」を予約しました。まだ開始まで30分ほどあるので、まずはぐるりと回ってみましょう。
はらぺこあおむしの偕成社。
入口を入って、大きい会場の方に向かいます。色とりどりの本が置かれた各出版社さんのブース、見ているだけでワクワクします。
最初に目に飛び込んできたのは、「偕成社」。私の娘が大好きな『はらぺこあおむし』の出版社さんじゃないですか。「あまり書店では見かけないかもしれないけれど、ぜひ読んで欲しい絵本を持ってきました」とのこと。ワゴンに入れられた絵本を子どもたちが一生懸命選んでいて、それだけでなんだかホッコリしますね。3冊購入すると、ガチャポンができるそう。非売品のグッズが入っているようなので、これは後でじっくり吟味したいところ...。
ロゴが気になる羽鳥書店。
その隣にあったのが「羽鳥書店」。ロゴが可愛くて気になっていたのですが、無印良品などを手掛ける、有名デザイナーの原研哉さんが作られたそうです。目についた本は、本文の一部が1ページごとに袋とじになっている不思議なつくりの『幻想都市風景』。内容は、建築家・光嶋裕介のドローイング集で、これも無印良品っぽい…と思ったら、やはり原研哉さんの装丁で納得。
研究員「袋とじをあけたら何かあるのですか?」
出版社「白紙です(笑)。」
お茶目に笑う編集の方が印象的でした。ちなみにドローイングを表現するための袋とじだそうです。
POPにこだわるミシマ社。
「ミシマ社」に近づいてみると、可愛いPOPのガーランドが目に入ってきました。よく見るとどれも手書きで、とっても魅力的。書店さんにお渡しするこのPOPをつくるのは、社内の「仕掛け屋」というチーム。「切って、貼って、描く」ことを専門とするPOP制作隊員の方々が、1つひとつ心をこめて、大切につくったものだそうです。本への強い愛を感じます。お話を聞いていたら、突然「おみくじをどうぞ」ということで…私は小吉。「そもそも環境は心に従って変わるものである。心が汚れていれば環境は悪くなる~(中略)~環境が静かであれば心は清らかになる。『遍照発揮性霊集』ヨリ」お言葉が身に染みる…。このおみくじは、お坊さん歴10年の白川密成著『坊さん、父になる。』の中のお言葉だそうです。
ニジノ絵本屋キャラバン特別LIVE。
さて、そろそろ予約した絵本LIVEの時間です。「ニジノ絵本屋」は、絵本のすばらしさを最大限に伝えるために「ニジノ絵本屋キャラバン」としてあちこちで読み聞かせLIVEを行っています。パフォーマーである2人のコロコロと変化する「声色」と、絵本にあわせて演奏される「音楽」の世界。なんだかショーを見ているようです。単に絵本を読むのではなく、五感で体験する感覚。まるで子どものころに戻ったような不思議な感動がありました。
では、引き続き面白い本を探しに行きましょう。次はどんな本に出会えるでしょうか。その前に、うどんすきが名物の「鳥茶屋本店」で絶品極太うどんを頂きます。冷房で冷えた体に塩味のきいた出汁が沁みわたります。食事を済ませ、向かいにある神楽坂のシンボルである毘沙門様「善國寺」にちょっとだけ寄り道。ここは、嵐の二宮和也さん主演のドラマに登場したお寺。ファンの間では嵐の聖地で、若い女性の参拝客が急増したそうです。「嵐のコンサートに当選しますように」という絵馬がたくさんありました。毘沙門様は「多聞天」とも呼ばれていて、願いごとをたくさん聞いてくれるそうです。
バッジが可愛い北書店。
昼食からもどると、驚くほどの人・人・人…。こんなに「本好き」がいるんだと思うと、なんだか嬉しくなります。最初のペースで回っていると全部見きれない!よし、急げ急げ!
「北書店」は新潟市にある、ひとりで経営されている個性的な書店さん。『人生は電気グルーヴ』という個人出版の本のタイトルに釘づけ!う~ん、これは運命の一冊なのか…。もう少し回ってから決めましょう。そのとなりにあるバッジも可愛い!新潟名物いろいろバッジだそうです。描かれているのは、日本酒にお米にへぎそば…。ソソられますねぇ!
yukariRo編集部の本に一目惚れ。
ん?北書店の一角に気になる本が…。秋田のリトルプレスがつくる「yukariRo(ユカリロ)」、漢字にすると「縁路」。普通に暮らす普通の人を取り上げた本だそうです。
「ある地域の“普通”って、実はよその人にとっては変わってるなーと感じる、おもしろポイントだと思うんです。秋田の“普通”を調べていたらヘンなことが多かったんで、つい本にしちゃったんです」とおっしゃる編集の方は、長野県ご出身。中を見てみると「こうしてわたしはいぶりがっこになった」「はたはたフィーバー」!?なんと素敵な見出し。一目惚れして購入です!
美しい雑誌、工芸青花。
向かいには、存在感のある美しい布貼りの本がたくさん並んでいます。
「これ、雑誌なんです」
と話すのは「工芸青花」の優しそうな男性。骨董、工芸、建築を“鑑賞する”というテーマで作られ、会員を中心に配布販売されているそうです。雑誌とは思えない素晴らしさで、年に3回刊行され、A4判、布貼り、箔押し、ハードカバーという立派な体裁。会費20,000円、1,000部限定、定価8,000~12,000円という、値段も雑誌とは思えないシロモノ。雑誌だからといって寝転びながら読むなんて恐れ多い!扉には、それぞれ違う「世界の布」が貼られています。
HaoChi Books、なぜ秋刀魚?
こちらは「ハオチーブックス」。東京を拠点に、台湾の生活雑貨や本を取り扱っているそうです。それにしても、日本文化をテーマにした雑誌「秋刀魚」の強烈な存在感。「寿司」や「忍者」ならわかりますが、なぜ「秋刀魚」なのか?気になりすぎる絶妙なネーミング。台湾のテント生地を使った、カラフルでしっかりしたつくりが魅力的なブックカバーなんかもありました。
三次元の本、青幻舎。
続いて、美しいものに目を奪われました。富士山と雲、鶴たちが織り成す圧巻のジオラマ。
『360°BOOK』は、これまでにない方法で三次元の世界を表現した「青幻舎」の画期的なギフトブックです。円を描くように本を360°ぐるっと開くと、瞬く間に繊細な立体のジオラマが現れます。こんな本をプレゼントされたら嬉しいなぁ…。飾っておいたら、子どもにグシャグシャにされるだろうなぁ…。
ビーナイスの切り絵。
人込みを抜けて小さな会場の方に行くと、ここでも気になるものを発見。繊細な切り絵をつくっているのは切り絵作家の高木亮さん。ここは「ビーナイス」のブースです。切り絵のアートカードが15枚収録されたユニークな作りのミニブック。ポストカードと絵本が一度に手に入りますね。犬のバルーンの表情にも惹かれて、思わず購入です。切り絵のワークショップが行われていましたが…時間がなかったので、来年はぜひ。
校正会社の書店、かもめブックス。
突き当りに見えてきたのは、書店調査でインタビューさせてもらった「かもめブックス」の栁下さんではありませんか。隠れ栁下さんファンの研究員は、この楽しみを最後に残していたのでした。かもめブックスでしか手に入らない本『きっといい日になりますように』を早速購入。大阪で活躍する寺田マユミさんのイラストでお話が進んでいく、サイレント映画のような本。海外のペーパーバックを一回り小さくしたサイズで、初版300冊限定、作家さんの検印付き。わかる人にはわかるコダワリも隠されていて、さすが、本好きをその気にさせるテクニックです。近日重版予定とのこと。栁下さんからお話を伺ったあとは、かもめブックスと一緒に出店している「WEEKENDERSCOFFEE All Right」のアイスコーヒーで一休み。
調査結果と戦利品。
エコバッグは、今日出会った愛すべき3冊で1つ、ポストカード2枚とアイスコーヒーで1つ、合計2つゲットできました。調査結果ですが...「本当におもしろい本だけを集めた」という謳い文句にウソはありません。あまり普段では出会うことができないような、こだわった本がたくさんありましたし、自分たちの手がけた本のこと、作家さんのことなど、本を愛する人たちとの熱い会話もかなり楽しめました。このイベント、本当にオススメです。
BOOK MARKET オリジナルエコバッグ(写真左)/『ウラオモテヤマネコ』のポストカード(写真上段中)/『yukariRo』(写真上段右)/『ユメとバルーン きりえ原画版』(写真下段中)/『きっといい日になりますように』(写真下段右)