レポート57/2018.08.03
読み型 四十八手
みなさんは本を読んでいるとき、自分の姿を意識したことがありますか?何時間もただ紙を見つめていると、知らず知らずのうちに楽な姿勢をとったり、ヘンな姿勢になったりしているものです。今回は「読み型 48手」と題して、さまざまな読書スタイルをご紹介。「あるある」から「ねーよ」まで、幅広く集めてみました。
座り型
1.ザ・読書
まずは読書家の模範的な姿勢から。猫背は万病の元、できるだけ背筋を伸ばしていたいものです。とはいえ、まっすぐ前を向き続けるのは無理があるので、あごを引く、目線を落とす、腕を伸ばすなど各自で微調整を。
2.考える人
ただ読むのではなく、考え込みたい場合はコレ。元ネタであるロダンの彫刻は「地獄の門から、もがきくるしむ罪人を見る姿」がモチーフだそうです。ロダンが着想を得たとされるダンテの『神曲』はもちろん、社会派の犯罪小説なんか似合うかもしれません。
3.早弁
ブックカバーだけでは心配、とにかく中身を見られたくない!という思春期的な構え。飲食禁止の場所では「何か食べてます?」と疑われる可能性があるので、大きく口を開けてアピールしましょう。
4.フリーハンド
楽譜に限らず、レシピ本、ダイエット本など、本を見開きで固定したい局面は意外に多いもの。最近では便利なブックスタンドがたくさん売っていますので、フリーハンドで優雅にキメましょう。
5.フェイス オン ザ ブック
もはや体力の限界、でもまだ本が読みたい、そんなときに。あるいは、紙の匂いが好きすぎる人に。涙・よだれ等に要注意。
6.待合室
病院や駅の待合室など、背もたれのない椅子では必然的にこうなりがち。出番が来たらいつでも飛び出せる身軽さが特徴です。最近ではすっかりスマホに押され気味ですが、ここはあえて紙で目立ちたい。
7.ロッキングチェア
ゆったりとリズムを取って。揺れながら読書できるなんて、これかハンモックくらいのものです。ちょっと古くさいかな…と心配なら、こんなUFO型ロッキングチェアもあります。独特のプロモーションビデオは必見。
8.乗馬
誰もが一度はやったことのあるジョッキースタイルは、学校の椅子でやりがち。
9.体育座り
女子の定番?ソファ、窓際、川の土手…インスタ映えを狙うなら欠かせないですね。片手にマグカップやクッキーをもてばなおよし。
10.正座
武士のつもりで、礼儀正しく、黙って読みましょう。
11.あぐら
部屋を片づけているとき、久々に見つけた本のおもしろさは異常。ついつい読みふけってしまいます。ただ、この姿勢は背中・腰への負担が大きいので油断は禁物です。
12.人間失格
椅子の上に片あぐら。銀座のバー・ルパンにて、太宰治が同席していた写真家・林忠彦に撮らせた有名なポーズです。この行儀の悪さは人間失格?
13.ノッティングヒル(カップル限定)
イギリスの映画『ノッティングヒルの恋人』のラストシーンでは、膝枕&手繋ぎの高等テクニックが登場します。実際には膝枕されている側(ジュリア・ロバーツ)も本に目線をやっていますが、さすがにそれは無理があります。
立ち型
14.両手もち
立ち型の基本形。揺れに弱く、電車でこれをやるには日ごろからの足腰の鍛錬がものを言います。ふらふらしていると「紙相撲」と揶揄されてしまうので注意。
15.片手もち
忙しいビジネスパーソンの必携スタイル。片手でページをめくるスキルが必要になりますので、右綴じ・左綴じ、どちらの本にも対応できるよう練習しておきましょう。
16.ワンハンドポケット
片手が空いているのに、あえて使わず威厳を誇示するオトナの構えです。部下が相談に来たら、たとえ暇でも「なんだね君、私はいま忙しいんだ」とうそぶくのが通。できるだけ難しそうな本が効果的です。
17.のぞき見
やめておきましょう。
18.金次郎
二宮金次郎は、元祖「ながら男」。長らく勤勉の象徴として崇められていましたが、スマホの普及とともに手のひらを返され、最近では立像ではなく座像が建てられているそうです。
19.ジョジョ読み
どこからともなく「ズギャーン」「ゴゴゴゴゴ」と音が鳴ります。とにかくかっこいい。指をパッと開くので、よっぽど開きやすい本か、タブレットじゃないと難しいかもしれません。
寝型
20.うつぶせ
寝そべり界の一番人気。楽そうに見えて、腰への負担はかなりのもの。両足を折り曲げれば「しゃちほこ型」になり、負担は倍になります。
21.マッサージ台
腰痛になったら、顔の部分に穴が空いたマッサージ台で問題を解決しましょう。ただし「そんな台、ほとんどの家庭にない」という新たな問題が。調べてみると1万円前後で手に入るようなので、興味がある方はどうぞ。横幅が広すぎると腕が回らないのでサイズ選びは慎重に。
22.よつんばい
本を寝ながら読みたいけど、まだやることがある…そんな状況で繰り出す保留の構えです。みんなでアルバムを見るときなんかもこれですね。
23.土下座
謝りながらも、こっそり読書。反省と勉強を兼ねた有能なポーズですが、相手の逆鱗に触れる前にやめたほうがいいでしょう。
24.サイド
紙をめくりづらく、下の手がしびれる上に、寝落ち率が高い。無難に見える姿勢にこそ欠点が多いのが、読書道の奥深さです。
25.涅槃像
寝仏ともいいます。サイドに比べて寝落ち率がダウン、腰への負担はアップ。あと、ありがたみも十分です。涅槃像というとタイのイメージですが、実は世界一大きな像が福岡県にあります。
26.見返り美人
「9.体育座り」よりもしなやか度UP。女性の場合、この体制で長時間読書するなら、文庫本サイズが無難でしょうか。私にはそれでも重いわ!というお嬢様は豆本を。
27.仰向け
コチラも定番ながら、大きな欠点を抱えています。手がかなり疲れる上に…暗い!長時間の読書には向きません。頃合いを見て適度に回転しましょう。
28.仰向けL字
足を壁に立てかけた、人間ブックエンド状態。仰向けと大差ないかと思いきや、足を上げると神経系を落ち着かせる効果があるんだとか。
29.フリーハンド(改)
帰ってきたフリーハンド。5で紹介した型の電子書籍版です。将来はこんな読書のカタチが増えていくのかもしれません。この姿勢でフリックする姿を想像すると、ちょっとシュール。
30.イン ザ ベッド
完全に寝る気のときのヤツです。欧米では4つも5つも枕を使ったりしますよね。寝るとき、本を読むために上半身を起こす用、インテリア…などと使い分けているからだそうです。
31.睡眠学習
もはや目も開ける気がないという人は、朗読CD。文豪自ら読み上げた作品だってあります。かなり棒読みなうえ、生活音も混じっていたりしますが。
運動型
32.開脚
本同様に自分自身も開いてみようという発想から生まれました。「読書して凝り固まった身体をほぐす」「ストレッチだけだと飽きるので本を読む」とWin-Winの関係になっています。
33.エアロバイク
両手が自由、目線も動かない、それでいて運動量は確保できるという「ながら読書」の理想型。お供にはロードバイクものでおなじみ、近藤史恵さんの作品はいかがでしょうか。
34.空気椅子
運動部のトラウマ。古来から伝わる鍛錬術に読書を加えて、頭も鍛えましょう。
35.腕立て
これも意外に読めます。本との距離が遠くなったり近くなったりするので、文字が詰まった本よりも名言集のようなゆとりのあるレイアウトの本がいいでしょう。
36.腹筋
よく見ると「9.体育座り」に上半身の動きをつけているだけなんですが、本は放っておくと閉じてしまうのでなかなか難しい。大判の絵本・写真集からチャレンジです。
37.寿司
バランスボールは単に腰かけるのもアリですが、研究員のイチオシはこちら。手足を地面から離してキープすることで体幹が鍛えられます。なおかつ読書にありがちな腰の負担もありません。主人公が空を飛ぶファンタジーものを読めば浮遊感も楽しめます。
38.リバース
発想の転換をしたいときにピッタリ。脳に酸素が行き渡り、フェイスアップ効果もあります。快適すぎて人をダメにするといわれているソファ「Yogibo」を使ってみるといいかもしれません。
39.ブレイクダンス
負荷も読みづらさも最大級。良いところは特にありませんが、しいていえば「ヘッドスピンしてちゃんと本の方向で止まったら当たり」など、独自のルールで遊べることでしょうか。
40.おひかえなすって
任侠映画などでおなじみですが、意味を知らない方も多いのでは?もともとは宿場など要所の顔役に、よそものが自分の素性を証明するためにとったポーズだそうです。「何読んでるの?」と聞かれたら、「アヤシイ本じゃございません」と答えるのが定跡。前に出した足が鍛えられます。
41.江頭
お尻を鍛える効果あり。例の音楽をかけて、右に左にリズミカルに動きましょう。もっと詳しく知りたい方は『エガヨガ』(自由国民社)をチェック。もはやこの1冊で48手ありそうです。
42.徒競走
上巻が思いのほかおもしろくて、すぐにでも下巻を買いに走り出したいときに。
43.桑田
読書から長い間離れ、久しぶりに大好きな本が読める…。平和に読書ができる日常に感謝する時には、厳かにこの姿勢からはじめましょう。
子ども型
44.テディベア
あぐらではなく、ふんわりとしたこの座り方は子どもならでは。大人になると足の裏側の筋肉が堅くなって、この体勢でいるのがキツくなるんだそうです。
45.二人羽織
耳元で朗読&後ろハグ、読み聞かせのスタンダードはやっぱりこれですね。どこにも行かせたくない!という慈愛にあふれています。子供が本好きすぎて「ええ加減寝てくれよ…」とお悩みの親御さんは、寝れると評判の絵本『おやすみロジャー』(飛鳥新社)で強制終了させましょう。
46.プレゼン
数ある読書のなかでも、オーディエンスに届けられる唯一の方法ではないでしょうか。もちろん、その分技術が必要。子どもたちのらんらんとした視線が一転に注がれる姿は微笑ましいです。
47.教科書忘れ
うれしはずかし隣のあの子と一緒に読書。相手によっては読書どころじゃないかも…。
48.四点留め
子どもの短い手足を活かして、本をがっちりロック。とても読みやすいとは思えませんが、子どもにすれば、本は重いものかもしれません。大人のみなさんは、新聞かビッグブックで試してみてください。
読書の姿勢48種類、半ば強引にあげてみましたが、いかがでしたでしょうか?
味わう、学ぶ、ただの暇つぶし、読み聞かせる…。一口に読書といっても、シーンごとに本との向き合い方は全然違うんですよね。このレポートを見て興味が出てきた方は、ぜひやってみてください。あなたが考えたオリジナルの読み型49手目の投稿、お待ちしております。