レポート66/2019.01.11
潜入「BOOK EXPO 秋の陣」

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BOOK EXPOは今年で8回目を迎える、国内最大規模の書店向け商談会。「帳合を超えて」をモットーに、全国の書店・出版社・取次店が集まります。会場が大阪・梅田ということで、「大阪ほんま本大賞」「京都本大賞」「西日本POP王決定戦」といった地域色たっぷりのイベントも目白押し。熱気たっぷりの会場をレポートしてみたいと思います。

会場に到着。

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いきなり西日本POP王の表彰式が開会セレモニーで行われるということで、開場10分前に到着しました。商談会と銘打つだけあって参加者のほとんどがスーツ姿。ラフな格好にリュックで来てしまった研究員は、なんだか場違いでアウェイ感ハンパない気が…。気を取り直して「報道」の名札を受け取り、会場内へと向かいます。

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  • 会場はグランフロント大阪(写真左)/来場者には大阪の老舗「WAKO」のクラフトコーヒーが無料提供された。(写真右)

開会セレモニー。

まずは実行委員長・洞本昌哉さんの挨拶から。洞本さんはふたば書房の代表取締役で、京都府書店組合副理事長、京都ブックフェス委員長も務める大物仕掛け人です。軽妙な語り口ながら、「関西発のイベントを通じて書店人を繋ぎたい」と熱い抱負を述べられました。そうだそうだ、とうなずくみなさん。会場は一体感に包まれ、表彰式が始まります。

手書きPOP部門の金賞は……、水嶋書房くずは駅店の正木さん、枡田さん。手書きPOPといえば、言葉で作品を推薦するのはもちろんですが、イラストを書いたり、紙を切り抜いたり、注目を集めるためにいろんな工夫が見られます。今回、金賞を受賞した水嶋書房のPOPは、週刊少年ジャンプで連載中の『アクタージュ act-age』を題材に、女優志望の主人公がビデオテープに絡めとられる様子を描きました。創作性が高く、POP自体がひとつの作品として成立していますね。ツイッターにも最新のPOPが続々アップ中です。

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  • 実行委員長・洞本昌哉さん(写真上左)/手書きPOP部門金賞、水嶋書房くずは駅店『アクタージュ act-age』POP(写真上右)/ディスプレイ部門の金賞、ふたば書房草津近鉄店『小学館図鑑NEOのクラフトブック』ディスプレイ実物が会場に展示。その華やかさに足を止めてしまう人が続出。(写真下)

ディスプレイ部門の金賞は、ふたば書房草津近鉄店の伊達さんでした。ディスプレイ部門は、とにかくスケールが圧倒的。エントリーされた作品の中には地面から天井まで本棚をまるまる使い、ぬいぐるみや模型を敷き詰めたようなものもたくさんありました。そんな中、金賞を受賞したふたば書房は『小学館図鑑NEOのクラフトブック』の魅力を、実際の流木を使ってダイナミックに表現。童心に返って「自分もつくってみたい!」と思わせてくれます。店内イベント、サイン会、充実の雑貨コーナーなど、いつ行ってもワクワクさせてくれるお店です。

書店員の方々はただ本を並べている訳ではなく、つくり手である出版社と同じように、どんな本が求められているか、本の魅力がどうすれば伝わるかを日夜考え続けています。そんな努力が評価される機会があるのは素晴らしいことですよね。

ブースを散策。

表彰式が終わると、会場では次々に商談がスタート。今回の出展数は過去最大、なんと約230ブース!さすがに全部見る時間はないので、気になるブースをいろいろとまわってみましょう。

医学書から絵本まで、西村書店。

会場に入ると、すぐに声をかけてくださったのが医学書でおなじみ西村書店。ネルソン・マンデラ、フェルメール、絵本ガイドなど、かなり幅広いテーマの本を出されています。絵本ガイドは一見意外ですが、「だって病院に絵本ありますよね?」と言われて納得。中でもオススメの本は『ハーブの秘密』とのこと。「昔は遺体の死臭をやわらげるために、パセリを振りかけた風習があったんですよねー」とさらっと仰っていて、何だか医学書系出版社らしいクールな一面を垣間見た気がしました。

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  • 雑学満載の『ハーブの秘密』(写真左)/『およばれのテーブルマナー』は、エルメス4代目社長の息子が、自分の子どもたちにテーブルマナーを教えるために書いた本。「ダメな例」が充実しているのがステキ。(写真右)

おしゃれにゆるーく、パイ・インターナショナル。

世界の絶景写真集やレターブックなど、アート・デザイン系で知られる出版社です。東京からの遠征組ですが、真っ先に紹介された本は、意外や意外『かんさい絵ことば辞典』という本。これから関西弁を学びたい方だけでなく、ネイティブ関西人の方にもかなり売れているそう。その他にもわりとゆるめの本が多数展示されていました。社名のパイはお母さんのつくってくれたパイの親しみやすさを表現したものでもあるとのこと。なんだか、イメージががらっと変わりました。

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  • 関西弁の魅力を伝える『かんさい絵ことば辞典』(写真左)/ブラックライトで絵が浮かび上がる仕掛け絵本『ブラックライトでさがせ!妖怪探偵世界旅行』。POPでお試し体験ができるので、置くだけで売り場が華やかになると書店にも好評だそう。(写真右)

祝「京都本大賞」受賞!PHP研究所。

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『異邦人』原田マハ著

満面の笑みで迎えていただいたのが、京都本大賞を受賞したPHP研究所。この賞は京都府を舞台にした作品が対象で、書店員および一般読者の投票で決定されます。京都に本部を持つ出版社が、嬉しいご当地受賞となりました。京都は源氏物語から続く文学ゆかりの地。ご当地文学賞は全国に数々ありますが、特別な意味をもつ賞のひとつではないでしょうか。受賞作の『異邦人』は京都の老舗画廊をテーマにした作品。著者の原田マハさんにとっても学生時代から憧れの地だったそうです。

創業3年目の快進撃、ライツ社。

2016年の設立以来、大きな注目を集めている兵庫県の出版社です。世界をテーマにしたスケールの大きな本が多く、中でも話題になっているのがTVでも人気の写真家・ヨシダナギさんの写真集『HEROES』。ヨシダさんは大好きな戦隊もののような構図で写真を撮ることが多く、このタイトルになったとか。12,000円と高額な本ながら、紀伊國屋書店本店では2ヶ月で270冊を完売。もったいなくて他のページを紹介できませんが、実物を手に取ってみると分かります。ビビットで壮大……欲しくなります。

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『HEROES』ヨシダナギ著

爽やかに元素推し!化学同人。

黄色い表紙が鮮やかな『元素生活』『元素手帳』を推していたのが化学同人。専門的なイメージのある理系の本ですが、初心者でも気軽に手に取りたくなるポップな本がずらりと揃っていました。『毒物ずかん』にはキャラクターイラストを使用。『ヒラメキ公認ガイドブック ようこそ宇宙へ』は子供の知育にもピッタリの、冒険心あふれる本です。統一感があり華やかなので、書店としてはフェアの企画も考えやすいんじゃないでしょうか。得意分野をしっかりと持ちながら、幅広い層にも興味を持ってもらいたいという工夫をひしひしと感じました。

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  • 『元素生活』寄藤文平著(写真左)/『毒物ずかん』くられ文・監修、姫川たけお絵(写真右)

大日本絵画は、なんと翻訳者自ら解説。

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  • 『きのこの妖精と虫たちのダンス』フィリップ・ユージー著、芝山悠平訳(写真左)

仕掛け絵本でおなじみ大日本絵画さん。書店調査「メッゲンドルファー」でお世話になったので挨拶させていただいたところ…なんと先月に出たばかりの新刊『きのこの妖精と虫たちのダンス』を翻訳した芝山悠平さん自ら解説してくださるという幸運に恵まれました!芝山さんはSF作家ですので、表現力は折り紙付き。一夜でドロドロに溶けてしまうヒトヨタケをシンデレラに例えるなど、すごくロマンチックな作品でした。飛び出すキノコはとにかくかわいい!仕掛け絵本との意外な相性の良さを感じました。

本を差し上げます!リブレ。

続いてコミックのブースを歩いていると、「第1巻差し上げています!」という、目を疑うような張り紙を見つけました。なぜそんな大盤振る舞いをしているのか、担当の方に聞いてみると、「コミックではノーマルの本がBLと間違えられたり、その逆があるので、まずは内容を知ってもらおうと思いまして」とのこと。まさに目からウロコでした。1巻がきちんと評価されれば2巻、3巻…とシリーズで注文してもらいやすい、コミックならではの作戦かもしれませんね。

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『広告会社、男子寮のおかずくん』オトクニ著

サイン会も大盛況。

作家のサイン会には、『阪堺電車177号の追憶』で大阪ほんま本大賞を受賞した山本巧次さん、日本絵本賞大賞をはじめ、数々の実績をもつ絵本作家のスズキコージさんが参加。1ファンとしてはもちろん、サイン本orサイン色紙を持ち帰って店におきたいという書店員さんも並び、長蛇の列をつくっていました。

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  • 『阪堺電車177号の追憶』山本巧次著

「大阪ほんま本」は京都本大賞と同様、大阪に由来のある物語(もしくは著者)に与えられる賞で、過去には高田郁さんや三浦しをんさん等が受賞されています。取次店と書店が力を合わせて、「ほんまに読んで欲しい1冊」を選出。販売収益で大阪の子供たちに本を寄贈するという、まさに地域一帯のプロジェクトです。普段、取次店は影の主役として語られることが多いですが、いかに尽力しているかというのが分かりますね。

ということで、現地レポートは以上です。文字通り、日が暮れるまで居座ってしまいました。通常、本のイベントではどの本を買おうか?と悩むことが多いのですが、今回は本のつくり手の想いを真っ正面から受け止める貴重な機会になりました。終わったあとはすっかり感化されてしまい、研究所の所長に「次回は本をつくって出したいです!」と直談判してしまいました。西も東も、まだまだ出版業界は元気ですね。来年はぜひ現地でお会いしましょう。